日米首脳会談の概要

平成19年11月16日

 福田総理は、11月16日午前10時25分より約1時間、ブッシュ大統領と日米首脳会談を行った。また、共同記者会見に引き続き、同日午後0時05分より約45分間行われたブッシュ大統領主催昼食会に出席した(日本側は、岩城官房副長官、加藤大使他、米側は、ライス国務長官、ボルテン大統領首席補佐官、ハドレー国家安全保障担当大統領補佐官、シーファー駐日米大使他、なお昼食会にはゲイツ国防長官、シュワブ米国通商代表他が加わった。)。今次訪米は福田総理にとって初の外国訪問。これは日本外交の要が一貫して日米同盟であることを示すものである。
会談の冒頭、大統領より、とても興味深いのは、我々の父親も大統領であり、総理大臣であったこと、さらには、我々自身お互い、石油業界の人間であることであると述べ、うち解けた雰囲気で日米首脳会談が始まった。

1.日米関係
(1)日米関係総論
日米同盟の強化について、両首脳は、日米同盟が日米によるアジア外交の展開における要であり、また、日米がグローバルな諸課題に対処していく上で不可欠の役割を果たしていることで一致した。日米は半世紀以上にわたり、時には困難を共に乗り越えつつ、今や強靱な同盟関係を築いたが、両首脳は、このような日米同盟を一層盤石なものとすることで一致した。特に、福田総理より、将来の日米関係を強化すべく、知的交流、草の根交流及び日本語教育の3本柱からなる日米交流を強化するイニシアティブを説明したのに対し、ブッシュ大統領から支持の表明があった。

(2)日米安保
日米安保については、ゲイツ国防長官が参加された昼食会の場において、日米安保体制が日米同盟の基盤であり、この体制に基づく抑止力の一層の強化の重要性につき認識の一致があった。また、在日米軍再編については、抑止力を維持し、地元負担軽減を図る形で、ロードマップに従い着実に実施していくことで一致した。また、ゲイツ国防長官より、在日米軍駐留経費負担について言及があったのに対し、福田総理より、同盟へのコミットは揺るぎない、本件については、引き続き担当閣僚にしっかりと交渉させ、早期にまとめたい旨述べた。

2.テロとの闘い・イラク情勢
(1)補給活動
テロとの闘いについて、アフガニスタンを再びテロの温床としてはならないとの認識の下、日米両国を含む国際社会が引き続いて取り組んでいくことで一致した。福田総理より、海上自衛隊によるインド洋での補給活動の早期再開に向けて法案の早期成立に全力を尽くす旨ブッシュ大統領に伝え、ブッシュ大統領からこれまでの我が国の支援への謝意と補給活動の再開への期待の表明があった。

(2)イラク情勢
イラクについて、福田総理より、米国のイラクの安定と復興に向けた努力を理解し、支持する旨述べ、日米が引き続きイラクの安定と復興に向けて共に協力していくことで一致した。

3.アジア情勢
(1)総論
アジア情勢については、日米同盟と日米のアジア政策との「共鳴」について話し合った。福田総理より、近隣諸国との関係強化、地域協力枠組みの活用などを通じてアジアにおいてリーダーシップを発揮したい旨述べた上で、強固な日米同盟はアジアに平和と繁栄の基盤をもたらし、また、こうした強固な日米同盟に依拠してアジア諸国との関係を一層深化させ、安定的で開かれた、そして繁栄し発展するアジアを実現することは日米共通の利益であり、日米同盟の更なる強化に貢献する旨述べた。ブッシュ大統領より、日米連携の重要性につき言及があった。

(2)北朝鮮
北朝鮮については、六者会合を通じて北朝鮮の核兵器・核計画の完全な放棄を実現すべく日米が引き続き緊密に連携して努力していくことで一致した。
また、福田総理より、核、ミサイルと並んで拉致問題の解決の重要性とテロ支援国家指定解除問題を含めた日米連携の重要性につき説明した。
これに対し、ブッシュ大統領より、日本政府と日本国民の間には米国が拉致問題を置き去りにして北朝鮮とディールをするのではないかとの心配があると理解しているが、拉致問題を決して忘れることはない旨述べた上で、日本政府の努力に対する支持の表明があった。
両首脳は、六者会合声明を全体としてバランスよく実施することが重要との点で一致し、引き続き日米で緊密に連携していくことを確認した。

(3)中国
中国については、福田総理より、中国が透明性の向上等を含め、より建設的な役割を果たすことが重要であると述べ、ブッシュ大統領より賛意を示した。また、福田総理より、今月下旬のASEAN関連首脳会議の機会にも中国首脳と会談し、中国側と信頼関係を構築したい旨説明した。

(4)ミャンマー
ミャンマーについては、共同記者会見でブッシュ大統領より、民主活動家弾圧を非難し、すべての政治犯の解放を求め、民主化の真の対話を支持する旨の発言があり、福田総理より、ミャンマーの民主化、人権状況の改善に向けて強く働きかけている旨説明した。また、ミャンマーの民主化支援に向け努力していく必要性を強調し、引き続き日米間で連携していくことを確認した。

(5)イラン
イランについて、ブッシュ大統領より、現状を非常に懸念する旨述べたのに対し、福田総理より、核兵器開発は容認できない旨述べた。引き続き国際社会が一致して圧力を高めていくことで一致した。

4.グローバルな課題
(1)気候変動
気候変動に関し、日米は、北海道洞爺湖サミットや国連での新たな交渉の場で、セクター別の取組等を通じて、実効性ある将来枠組みの構築に向けて具体的な成果を得られるよう緊密に連携することで一致した。
また、経済成長を維持しつつ、地球温暖化防止とエネルギー安全保障を両立させるために、革新的技術開発の推進及び原子力の平和的利用を可能とするために協力していくことで一致した。

(2)アフリカ開発支援
アフリカ開発支援については、本件が国際社会全体で取り組むべき課題であることを確認し、来年5月の第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)の成果をサミットにつなげるべく、日米で一層緊密に協力していくことで一致した。

(3)国際保健分野での日米協力
福田総理より、アフリカを中心とする保健状況を改善すべく、国際保健分野での日米協力を進めることを提起したのに対し、ブッシュ大統領より、高い関心を持って賛同の意を示した。

5.国際経済
(1)WTO
WTOドーハ・ラウンド交渉について、早期妥結の重要性を確認の上、日米がともに推進力になって交渉の加速化と収斂に向けて努力していくことで一致した。

(2)米国産牛肉問題
米国産牛肉問題については、共同記者会見において、ブッシュ大統領より、日本市場が国際的なガイドラインと調和して、すべての米国産牛肉及び牛肉製品に対して完全に開放されるようになることを希望する旨述べたのに対し、総理より、日本政府として国民の食の安全を大前提に科学的な知見に基づいて対応していくということである旨述べた。

6.安保理改革
安保理改革について、ブッシュ大統領より、日本の常任理事国入りへの支持が改めて表明されるとともに、安保理改革実現に向けて日米両国で議論していくことで一致した。